お気に入りマンガの感想のようなブログです【一部ネタバレあり】

【STEP2】あなたにセンチメンタル

昭和の時代はいろいろとスゴかったのである。いや、スゴかったのは1990年代までだろうか。テレビではゴールデンタイムに裸の女性が映っていたし、深夜は今や伝説のアダルトな番組がいくつもあった。島が仕事終わりにカメラマンの荒田に誘われて出向いたデートスナックも、今では見ない形の店だろう。いや、今は形を変えて存在するのだ。つまりは、「出会い喫茶」のようなものだと思えば良いだろう。ただ、デートスナックのほうが女性の装いは過激なようである。

昭和に流行った?デートスナックとは何か

デートスナックの概要はこうである。入店し、まずは飲食代金(飲み放題)3000円を支払う。その後、店の女性と意気投合(という体)して外に連れ出すとプラス7000円。その後のプレイ代金(つまり大人の関係)が2万円、ホ別である。これが高いか安いかは、相手の女性次第といったところだろうか。2025年現在、パパ活の相場は30,000円~100,000円ということである。と考えれば、デートスナックも、特にボッタくっているわけではないということか。店を通しての値段と考えると、それなりにしっかりした値段設定なのかもしれない。

しかし、課長の昇進したばかりの島にとって、絶対にハズレを引きたくない出費のはずである。一方、女性を連れてさっさと出て行ってしまったカメラマンの荒田は、かなり場慣れしているのだろう。大企業の物撮りなどをしているくらいだから羽振りも良いと思われる。

肝心なところで役に立たない悲しき首長竜

さて、こういう店は一期一会が基本である。相手の女性と会うことは二度とないだろうと決めつけ、無礼な振る舞いをするのは得策ではない。ただ、話しを多少盛る程度は誰でもやることである。それにしても、島が本当に小心者であれば、ここで帰っても良かったはずだ。気付け薬のように酒を流し込んだところで、これは浮気に含まれるだろう。前話でビビっていたのがはるか昔のようにかんじ、20歳の女子大生・絵美ちゃんをご指名である。

しかし、悲しいかな島耕作34歳、ここ一番で役立たずなのである。飲みすぎたのかそれとも緊張したのか、初回で田代友紀を相手にした際は問題なかったはずなのに、である。そう、あまりに好みのタイプを前にすると逆にうまくいかないことは珍しくないのだ。そして、大人の関係の有無にかかわらず、料金は発生する。ホテルまで来たにもかかわらず目的を果たせなかったとあれば、サラリーマンにとっては痛い出費である。

おじさんはなぜ限られたプレイ時間を削ってまで説教してしまうのか

ところで、さんざんプレイを楽しんだ後でいきなり説教をかましてくる「説教おじさん」はいつごろからいたのだろうか。売春は世界最古の職業という説もあるが、そのころから説教おじさんはいたのだろうか。だとすれば、楽しんだ後に説教かますのはもうDNAに刻まれた、抗えないものなのかもしれない。

しかし、すべての男性が説教かますわけではないはずだ。そう考えると、説教おじさんは、脈々と受け継がれたDNAが今も色濃く残っている一部の男性、ということになるのだろうか。いずれにしても、そんな場で説教しても相手に響くとも思えないし、プレイ時間の無駄遣いだろう。それとも、説教も含めたプレイ時間なのだろうか。

結局、予行練習になったのか、それだけの金を払う意味はあったのか

なぜ島はデートスナックに行ったかというと、そもそもは会社でアルバイト社員の面接試験があるというの発端だ。なぜその予行練習でデートスナックなのか理解不能だが、まあ風俗に行くときの理由というか、言い訳なんてそんなもんだろう。

絵美ちゃんとの時間が予行練習になったのか、支払った金額分は楽しめたのか謎だが、二日酔いで酒臭いまま面接会場に向かう島。アルバイト社員の面接に管理職が5人も同席するのはものすごく非効率な気がするが、これが大企業なのかそれとも初芝のルールなのか。

それにしても、島のクズっぷりは半端ないのである。これは酒のせいではない。面接官の一人である企画部の鬼沢にも、各応募者の経歴にもケチをつける始末である。もはや適性がないのは面接官の島のほうである。

素性を明かすのはリスクがあるが盛りすぎるのもまたリスクである

ということで、マンガのような展開である。次の応募者は絵美ちゃんだったのである。絵美はもちろんデートスナックで使っている源氏名で、本名は桜井恵子。相模原女子短大卒で母は雑貨商のようである。まさかの再会であるが、たいして動じていなさそうなのは絵美ちゃんのほうだ。一方の島は、身分を偽っただけでなく、本番での弱さを知られてしまった昨日の後悔で頭がいっぱいだろう。

絵美ちゃん改め桜井恵子も、デートスナック勤務がバレたら不採用は確実である。そのことは島しか知らない。ただ、恵子の素性を明かすということは、島自身がその店に行ったことを白状するのと同義だ。そのためデートスナックの件は二人の間では秘密のままだろう。しかし、不能に終わったのは飲みすぎた自分のせいにもかかわらず、説教かました女性と一緒に働くのは都合が悪いという、身勝手すぎる理由で不採用を選択する島。ドン引きのクズっぷりである。

ただ、ことは島の思うように進まないのである。島にとっては都合が悪いだろうが、恵子は頭がよく如才ないのだから他の試験官の判断は採用である。

秘密を共有した相手から呼び出される恐怖

アルバイトが人事部配属になったからといって何が問題なのか、初期の島耕作は本当にクズで小心者である。そして相手の女性のほうが肝が据わっているというか、気持ちの良い性格をしているというか、島よりよほど大人だというのが特徴である。

とはいえ、再び声をかけられたらビビるだろう。待ち合わせ場所を、東京プラザホテルの1607号室に指定されたら、なおさらである。

しかし、ここでも大人なのは桜井恵子のほうであった、入社間もないはずのアルバイトが給料日に社員購入権でラジカセを買うとはかなり思い切った金の使い方だが、デートスナックで稼いだ分もつぎ込んだのだろうか。割り引き価格とはいえ、2~3万円くらいはしそうである。それにしてもアルバイトでも社員購入権を支給しているのは大企業の懐の深さか。

そして、恵子から島へのネクタイのプレゼントである。荒田が言うには、女が男にネクタイを送るのは「あなたに首ったけ」だそうだ。こんな出来事の間に首長竜の説教おじさんは歳を取りに35歳になっているのだった。