お気に入りマンガの感想のようなブログです【一部ネタバレあり】

【STEP15】I Say a Little Prayer

冒頭からエロシーンなのである。妙齢でなくても構うことなくエロシーンを叩きこんでくるのが弘兼先生の作品なのである。

老兵は死なず、なのである。普段から良いものを食べているからなのだろうか。また、やはりオーナー社長はタフということなのだろうか。後遺症は残っても生き長られる強さがあるだ。植松権兵衛は会話はできないので、動くほうの右手で介護士に指文字でひらがなを書くことでコミュニケーションをとるのだが、これは互いに疲れそうである。

冷え冷えの関係でも長年連れ添っていれば互いの考えては理解できる

後遺症が残っても気弱になっている様子はない権兵衛。減らず口を叩く始末だが、会長夫人も権兵衛を思いやったり同情したりする様子はない。余計な会話はせず後継者問題に切り込むあたり、普段の関係性も冷え切っており、必要最低限の会話であろうことが見て取れるのである。

会長夫人は当然、溺愛する息子の植松圭介以外の後継は許さない姿勢だが、そもそも夫人は大株主なのだろうか。取締役会にも出ていないようなので、会社に席がないのは間違いないだろう。オーナーの夫人ということで大株主であればその意見も無視できないと思うが、権兵衛の返答から察するに、そこまで強い影響力はないように思える。

普通なら絶対に行きたくないけどむしろ行ったほうがいろいろ楽しそうなBBQ

今晩の島と平瀬健一が食事を楽しむのは、日本酒が揃っていそうな居酒屋である。二人にしては少々庶民的な店である。

酒の肴はUEMATSUである。まさかのオーナー夫人からのご招待なのである。以前から社外取締役を務める平瀬も、自宅に招かれるのは初めてのようだ。会長が入院したばかりのこの時期に、取締役会のメンバーを集めてBBQパーティーやるからぜひ来て!なんて招待を受けても、絶対何かあるだろうし、良い気持ちになるわけがない。しかしこれは逆に、取締役会のメンバーとして仕方ないところか。どうする?と言いながら参加の意向を決める島と平瀬。お前ら絶対に楽しんでいるだろう・・・。

美味いもので釣るつもりなのかそれとも楽しんでほしいのか

さて、BBQパーティ当日、参加者は銀座から招かれたシェフが腕を振るったシャトーブリアンに舌鼓なのである。そして、シャトーブリアンにはラトゥールがよく合うのだ。招待された取締役会のメンバーも、ひとまずは楽しんでいるようでなによりである。

とはいえ、たんなる慰労や懇親の場ではないわけで、夫人は圭介推しに熱心なのである。そうだろう、取締役会のメンバーから「後継には圭介が収まるべき」という言質をとるのが目的なのだ。だが、そんなのは島も平瀬も分かり切っている。当然の返答で会話をつなぐのである。

自分で開催しておきながら誰を招待したかもよくわかっていない様子の植松夫人

そして、当の圭介である。相変わらずの能天気感満載で、ふわっとした返答なのである。そもそも本人が、社長になるという意識が低いようなのである。これには母も分かっていてもガッカリだろう。ようは、乳離れしていない息子と息子離れしていない母という関係なのだ。結婚と離婚を経験し、多くの女性と付き合ってきた島と平瀬から見たら、お笑いものの親子なのである。

圭介は、母がどのような思惑でBBQパーティを開いたかくらいは察しているのだろうか。さて、取締役会のメンバーを招待したわけだから剣持松男もパーティに足を運んでいるのである。しかし、自分で招待したはずなのに圭介から松男を紹介されても「誰この人?」な反応なのである。

手紙は会長夫人の名で送られているが、夫人が自分で郵送したのではないのだろう。おそらく長峰に指示を出し、夫人の名で招待状を出したのだ。だから、夫人が、新しく取締役会に加わった松男のことは知らなくても当然なのかもしれない。

自分で「この人とは馬が合う」と言って紹介するのが圭介

圭介としては、松男と馬が合うようである。自分で言うくらいだから相当なのだろう。松男としては、如才なく圭介の酒の相手をしているだけだろうが。まあ、同じ権兵衛の血が入った2人だから、馬が合ったとしても不思議ではない。

さて、こういう出会いかたは危険である。松男がただシャトーブリアンやラトゥールを楽しむために、パーティに来るわけがないのである。もともとは社外監査役として勉強した後に、社長に推挙してもらうはずだったが、権兵衛が倒れたことで、どう転ぶか分からなくなった。権兵衛が健在であれば、引退を1、2年を伸ばしながら松男に承継することもできただろう。

しかし、権兵衛の退任は待ったなしである。後継に若い圭介が収まれば、松男が社長になる芽はほぼ潰える。松男がいくら優秀でも、圭介が早期退陣する可能性などほぼない。そして、社長の席を空くのをノンビリ待てる松男でもないのだ。「自分はミル貝のように、ただじっとしているだけでダラダラ生きる人生なんてまっぴらだ!」というほどの人間である。そう、権兵衛の後継の座を奪い取るのは今しかないのだ。

島や平瀬など、一部の取締役会メンバーから見れば、松男は新しく社外取締役に加わった一人にすぎない。プロ経営者などであれば別だろうが、いきなり後継に収まるのは突然すぎるわけだ。松男が自身で後継者に名乗りを上げても、不発に終わるのは目に見えている。となれば、誰かから推挙してもらうしかない。そう、一番のターゲットは会長夫人なのである。