お気に入りマンガの感想のようなブログです【一部ネタバレあり】

【STEP26】Silly Love Songs

なにかと頼られがちなのが島耕作なのである。そして基本的に断らず時間を作るのが島耕作らしさだろう。だから、会長夫人の植松貴子からの呼び出しにも手ぶらで出かけてしまうのである。

夕食のお誘いといってもこのタイミングであれば、呼び出される理由は1つなのである。剣持松男が圭介と兄弟であることを知っているのは、取締役会では島と平瀬、そして上杉博志と長峰和馬と限られる。議長の徳野恭三も知っているかもしれない。なぜなら、三銃士の1人で、都心が降雪に見舞われた日も、島の事務所に顔を出していたくらいだから。

まあ、剣持も自ら、実は私、圭介の腹違いの兄なんです、などと、腹違いの弟の母に伝えることはしないだろう。つまり知らぬは会長夫人だけなのである。とはいえ、何も知らぬまま剣持と愛人関係を続け、その男がまさか圭介を飛び越して次期社長に就くことなど、想像できるはずがない。さすがにこれは心中察するのである。剣持が圭介の腹違いの兄にあたる人物であることを誰も告げなかったのは、会長夫人をバカにしているからか、それとも気を使ってか。まあ、告げたら告げたで、また大変なことになるのは分かっていたから黙っていただけだろう。知らんけど。

50男と60過ぎの女性がボートdeデート

スーツでボートを漕ぐって大変じゃないか?水が入ってくるかも、とか心配にならないか?と思うが、楽しいひと時でも、穏やかでも幸せな時間でもないのが悲しい。ボートに乗ろう、と言い出したのはどちらだろうか。確かめようがないが、貴子にとっては、いろいろと確かめないといけない時間なのである。

剣持がなぜ60過ぎのお婆さんに接近してきたのか、生来の熟女好きは真っ赤な嘘なのか。答えは明白で、60過ぎのお婆さんに接近してきたのは、会長夫人の弱みを握るためだったのである。結局は、ナチュラルボーン熟女好きではなかったのだ。好きで20歳も年上の老女を抱いていたわけではないのである。

しかし、結果的に、弱みを握ったもののそれを切り札として出す必要はなく、剣持は比較的すんなりと次期社長の座に収まったのである。圭介が無能だったこともあるが、権兵衛の行きつけの店での邂逅、ゴルフ場で打ち解けたことも大きかったのではないだろうか。ここはもう、権兵衛の信頼を得るとともに、貴子と接近することにも成功した剣持の作戦勝ちだろう。

こういったことが明るみになった場合、窮地に追い込まれるのは男か女か

この2人の関係は、秘密であり誰も知らない。怒りに任せ、剣持がアプローチしてきた、と言って貴子にメリットはあるのか。剣持の次期社長の件が白紙になるほど決定的なことにはならないはずだ。ではこの関係が権兵衛の耳に入ったらどうだろうか。見舞いにもろくに来ない夫人が、自身が剣持の策略にはまったことや悪評を権兵衛に伝えたところで何も変わらないと思われる。権兵衛自身、他人の女性関係については問わないだろうし、それが次期社長の件を差し戻す理由にはならないだろう。むしろ貴子の行動を責め立て、夫婦仲がさらに悪くなって終わりくらいが関の山か。

といっても一時期でも乙女に戻り、甘い時間を過ごした貴子の腹の虫がおさまるわけがない。そう、考えることは復讐である。しかし剣持も貴子をバカにするように切り捨てる必要はなかったはずである。剣持は次期社長ではあるが、株は全くも持っていないと考えられる。株式会社は株を多く持っているものが強いのだ。貴子をうまいこと味方につけておけば、社長就任後も使い道があったかもしれない。どうやら、必要以上にマウントを取りたがり、相手をつぶそうとするのが剣持のようである。きっとそれが気持ち良いのだろう。しかし、島耕作ワールドにおいて、こういった人物は往々にして残念な末路をたどるのである。