お気に入りマンガの感想のようなブログです【一部ネタバレあり】

【STEP31】Last Supper

伝え方というのは非常に大切である。だれがどういうタイミングで、どの場で、どのような口調で伝えるかによって、相手の受け取り方もその後の展開も大きく変わる。

新社長に呼び出され和やかな雰囲気の会食になるかと思いきや、まさかのクビ宣告なのである。UEMATSUグループの1つ、パインデベロッパーの社長を務める谷村鉄也が受けた屈辱はこれ以上ないものだったろう。そして、黒字は出しているとはいえ、業界水準からすると剣持としては到底納得いかないものだったのだろう。

それにしても、剣持は会食の場で独断的に首を宣告できるほどの権力を、いつの間に持ったのだろうか。そして、谷村が去った後は、1人で食事を楽しんだのだろうか。

馬が合うと思っていた男からの非情宣告に何を思うか

形はどうあれ、谷村の排除に成功した剣持の次のターゲットは、いよいよ植松圭介なのである。谷村の後のポジションに圭介を据えようということらしい。パインデベロッパーの見解は剣持と圭介で大きく異なる。剣持は、パインデベロッパーは今後重要なポジションになる会社と考えるが、圭介は、大して重要ではないと言う。まあ、剣持が重要だと言っているのは、圭介を追い出すための都合の良い理由付けの1つにすぎないはずである。また、パインデベロッパーのオフィスは吉祥寺にあるようで、これも圭介を銀座から追い出すのにも好都合なのだろう。

これが要は左遷であることは圭介も分かっているようだが、意外にもあっさり承諾するのである。圭介の肩書は副社長のママなのだから、突っぱねることもできたかもしれないが、もう剣持と顔を合わせるのも嫌になってきているということなのだろう。馬が合うと一方的に思い、剣持をよく食事に連れ出していたのが懐かしい今日この頃である。

目を付けられてしまったのが運の尽き

そう、おそらく谷村は、圭介の左遷先となるポジションを空けるために排除されたのだ。UEMATSUグループにとってパインデベロッパーの存在は大きくない。圭介の「さほど重要ではない」という見解は、取締役会も同じだろう。グループの利益に大きく寄与することをないが、赤字ではなく黒字は出ている。なので、特にテコ入れもせずそのままでも良かったはずである。

ではなぜ排除されたのかというと、そこに剣持の作戦があるのだろう。圭介をいきなり副社長から降ろしたり、グループの本流から外したりすることは難しい。そこで、UEMATSUグループ内で影響力の小さいパインデベロッパーの存在に目を付けたのだ。剣持は、今後、UEMATSUグループ内で重要になる会社、という理由を付けて圭介をパインデベロッパーに追い払おうとしたのだろう。そのために現職の谷村を、たいした成績を残していないことを理由にクビを宣告したのだ。

もちろん、大きな利益を出せずにいたの谷村にも責任はあるかもしれない。しかし、目を付けられてしまった谷村は不運であったといえる。ただ、UEMATSUグループ各社の業績をくまなく調べ、UEMATSU全体のポートフォリオを分析したうえでパインデベロッパーをターゲットにしたと考えると、剣持の手腕はさすがともいえるのだ。

島耕作ワールドでゴルフといえば必ずと言って良いほど何かが起こる

本日は島と平瀬健一、徳野恭三の3人でのラウンドなのである。この3人で回るとなると、ラウンド中の会話は当然UEMATSU一択なのだが、幸いにして彼らの身には何も起こらなった。代わりにもたらされたのは、悲報なのである。

谷村にとっての本当の最後の晩餐はいつだったのだろうか。剣持からクビを宣告されたあの夜から数日が経っていそうではあるが、そこまで早まる必要はなかったのではないか。剣持への抗議は、違うかたちでできなかったのだろうか。

剣持の指摘に沿って考えれば、たしかに業界平均よりは、利益を出していなかったかもしれない。しかし一方で、グループの中でさほど重要視されていない会社のなかで、赤字は出さずに社長業を5年続けてきたのである。UEMATSUを辞めることになったとしても、次の働き口は十分あったのではないだろうか。26歳の時にUEMATSUに入り28年たち、その最期がこれというのはあまりに悲しいではないか。