大人の社会科見学である。島耕作、四谷嵐子、森久三郎が訪れたのは、防衛装備庁 次世代整備研究所 飯岡支所である。工場見学などは、なぜ心躍るのだろうか。大して知識がなく、丁寧な解説を聞いてもほとんど理解できておらず「なるほど、分からん!」となっていても、なぜか楽しいものなのだ。
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楽しい時間に限ってロクでもない連絡が来るのも本作のお決まり

島が長峰和馬から受けた連絡は、討ち死にである。まあ、利益が薄い事業であれば仕方がないだろう。利益率を高めたプランを再提出するという手もあるだろうが、一度Noを突き付けた件も再考するほど、剣持も甘くないはずだ。そもそも大手が薄利を理由に撤退する案件である。剣持の首を縦に振らせるために尽力したとしても、これ以上はおそらく徒労に終わるのは誰にでもわかることなのだ。
ていうかUEMATSUが絡む必要なくね?な案件なのである

ということで、これは普通に組み直せばよいだけの案件なのである。そもそもこの件は、UEMATSUが技術的にも人的にも、関わらなくても成立するのだ。
ようは、森塗研の技術と、テコットの中央研究所があれば、ことは足りるのである。UEMATSUが人も技術も場所も提供しないのであれば、森とテコットを組ませれば良いだけなのだ。森とテコットの連携が無事に済めば、UEMATSUはほぼお役御免で問題ないだろう。もちろん、ステルス案件に追われる森塗研に仕事を出すなどの関係性は継続するが、UEMATSUとしては、森やテコットから定期的に進捗報告などを受ければ十分と思われる。その報告についても、UEMATSUが森に仕事を出すのであれば、必然的に顔を合わせる機会も増えるはずだ。テコット側も、四谷が勝手に島を食事に誘うので、こちらもクリアである。
討ち死にした長峰をさらに追い込む鬼

剣持へのプレゼンで討ち死にした長峰は死体蹴りされる羽目になるのである。こういうときに社長からいきなり電話をもらっても全く嬉しくないのはどの世界でも変わらない。社員から「すみません、ちょっとお話しが・・・」というときは、ほぼほぼ退職などの話であることと同じだ。
長峰和馬66歳は、UEMATSUで働き始め50年になる。ついでに貴子にも一筋のようである。その長峰への引退勧告とは、なんと厳しいことか。しかしこの重い話を、サラッと伝えられるのが剣持が剛腕であるゆえんだろう。バンカー時代も行員への多くの退職勧告や、融資先企業への容赦のない貸しはがしをしてきたに違いない。先日のステルス案件を一蹴したのと同様、長峰を追放するなど昼食ついでに済ませてしまう程度のものなのだ。
追放する気満々の剣持だが、一応逃げ場だけは用意しているのが、また悪い奴なのである。長峰がまだUEMATSUで働く場合に用意するポストは、植松圭介が社長を務める吉祥寺の会社の副社長だという。圭介が新天地が気持ちを入れ替えがんばっていることを知れば、長峰にとって実は悪い話ではないだろうが、これ以上剣持と関わりたくないという気も強いだろう。岐路に立たされた、長峰和馬66歳である。
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逢瀬中に背中を押され男は何を思うか

岐路に立つ長峰が寄るのはHOTERU潮。むろん、貴子と肌を合わせてのことである。退任勧告など情事の後にする話題なのか謎だが、男がこういう話を切り出すときに妙に気持ちの強さを見せるのが貴子の魅力なのだろうか。そして貴子の提案は、まさかの森塗研買収なのである。
森塗研の企業価値はどの程度なのだろうか。近年は業績が振るわないとはいえ、町工場として設備もそれなりにあり、社員もいる。町工場とはいえ、平気で億単位の価値はあるだろう。株はどうなっているのだろうか。森久三郎が100%保有している状態であればまだ良いが、複数の人間や金融機関が絡んでくるとややこしくなる。そもそも買収資金はどうするのかということだが、そこは貴子様である。UEMATSUの株は権兵衛が大半を所有していると思っていたが、貴子もそれなりに保有しているようだ。少なくとも森塗研を買収できる株数で、売却すれば億単位になるのだろう。
長峰のまさかの思い切った行動に島も驚きだが、これを前向きに応援するのが島耕作の良さである。起業目的が「剣持の鼻をあかす」ではちょっと心配だが、前向きな貴子・長峰連合の行く末を見守りたいものだ。
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