お気に入りマンガの感想のようなブログです【一部ネタバレあり】

社外取締役【STEP42】Never Gonna Give You Up

諦めない男、沼田清伍である。ミャンマーでの日本酒造りの夢破れた桜沼酒造の会長が、次に勝負をかける場として選んだのは、ニューヨークだ。「喝采」のオープニングセレモニーはなんと400~500人規模で行われるようだ。ニューヨーク州ハイドパークに立派な蔵も建て、いよいよ本格始動である。耕作も鏡割りに参加し社外取締役としてのお役目を果たすのである。

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世界のアルコール市場で日本酒はどういったポジションに位置するのか

日本酒は世界中でどの程度飲まれているのだろうか。アメリカをはじめとする「SAKEブーム」はあるものの、ビールやワイン、ウイスキーといったメジャーなアルコール飲料と比較すると、マイナーなアルコール飲料に属し、輸出量もまだまだ少ない。アメリカで飲まれているアルコール飲料のうち、日本酒の割合はわずか0.2%だそうである。もちろん、それを悲観する沼田会長ではないはずだ。むしろ、伸びしろと捉えているのではないだろうか。

さて、セレモニーの翌日はさっそく市内の酒店で試飲キャンペーンなのである。リカーショップに並ぶ日本酒は、ニューヨーク市民にどう映るのか。桜沼酒造の店員さんも日本の法被を着て張り切り、島も沼田会長も現地視察である。このあたり、しっかりとトップが足を運ぶというのは非常に大事で経営者は参考にすべきだろう。

しかし、店を訪れた客の反応はイマイチのようだ。日本酒になじみがなければ当然の反応と言える。なにせ、日本酒はアメリカでほとんど飲まれていないアルコール類である。客も店員に声をかけられたからとりあえず口にしてみるだけであって、普段なら日本酒など見向きもしないだろう。ましてや、試飲してみようなど、日本酒を知っているか、よほど好奇心旺盛な人間ということになるはずだ。

いかにも買わなそうな客が来たときどのようにふるまうべきなのか

そう、そして通常、試飲や試食には人が群がるのだ。つまり、「タダ」と認識して寄ってくる人種である。買うつもりなど一ミリもないのに。冷やかしや卑しさなど、さまざまあるだろう。しかし、「タダ」の魅力には勝てないのだ。日本酒だから人が群がらないのであって、メジャーなアルコールの試飲であれば人だかりができているだろう。

そして我々は見た目で判断する。小汚く、どうみても金を持っていなさそうな人間が、試飲させてくれと言ってきたら「こいつ、タダだと思って来やがったな」と。そんな人間が、試飲をまさかのおかわりでもしようものなら、「なんてやつだ!」と怒りや呆れといった感情が渦巻くのが普通だろう。

我々は……この展開に見覚えがある……このみすぼらしい格好をした男性が実は大物だった、というような展開を知っている!38年ぶりにニューヨーク編にもかかわらず変わらないこの展開を!

ということで、ホームレスに扮し通りがかりの人間にいきなり金を借りようとした、バクスター・ゴードン(その正体は、人嫌いで有名なコスモス映画社の会長である)を想起させるのである。遠慮なく喝采の試飲をし続けるホームレスのような格好をした男性に、販売員は当然ながらドン引く。しかし、沼田会長はそんな試飲客に怪訝な顔もせず、平等に扱うのだ。沼田会長はなんとできた人間なのだろうか。移民のタクシードライバーを「嫌なやつ」と決めつけた島も反省しきりだろう。そして、沼田会長の「おいしい酒は人を幸せにする」とは、なんと素晴らしい言葉なのか。

沼田会長の慧眼か、それともたまたまか。試飲を続けていたこの男性は、やはり只者ではないらしい。金など持っていないように見えて、一気に10ケース(120本)の大量購入である。そして届け先は、富裕層が多くする高級住宅地と知られるアッパーイーストサイド。アッパーイーストサイドは、日本でいえば青山あたりなのだろうか。まあ比べるのは難しいが。そこの部屋への配達を依頼するこの人物はいったい何者なのか。それは次号のお楽しみなのである。