クラブに飲みに来て、店の閉店・ママとのアフターまで時間があるから、うどんでも食べに行ってくるかと考える行員。そもそも何時から飲みに来ているのか?店の閉店は12時である。夜8時から飲みに来たとして、閉店後のアフターも実現するとなると、帰宅は日付変わって午前2時前後にはなるだろう。どんだけ暇なのだ?明日は仕事はないのか?休みなのか?その後のアフターでも食べるつもりなのだろうか。ともあれ、高野は清宮由美子のリクエストに応えるべく、しゃぶしゃぶの個室予約を取るのだった。
身の程を超えた男女関係を築くのは島耕作ワールドではハイリスク
さて、高野がせっかくアフターの約束を取ったタイミングで現れるのが、剣持松男なのである。かつての上司と部下である。高野のビビりようは、由美子との関係が発覚するのを恐れてか、それとも、松男が四菱銀行を辞める際、副頭取の頭にビールをぶっかけたことなどの話しが、高野の耳に入っているからだろうか。
会社を辞めて無敵感が増したのか、饒舌な松男。それにしても古巣の悪口をいうのは格好悪い。そして、高野と剣持の上下関係は強烈なものだったのだろう。わざわざ早くから飲みに来て、アフターも楽しもうとしていた高野にとって、面白いはずがない。ここはさっさと引き上げて正解である。アフターまではまだ時間はあるから、暇つぶしにうどんでも食べるのだろうか。
高野の小物ぶりをバカにする松男。それをたしなめる由美子だが、店にたくさんお金を落としてくれる太客、というポジションが決まっている時点で、軽くディスっているのに気が付いているのだろうか。
待ち合わせなど忘れたかのようにホテルへGO
そして、唐突なエロシーンである。島耕作といえば、唐突なエロシーンである。今回エロシーンを演じる男女は、剣持松男と清宮由美子である。「ギルダ」を早めに閉店しての、丸の内ホテルでの逢引きである。最近、主人公はエロシーンを他者に譲っている。
高野からの電話はおそらく「何時くらいに赤坂に着くのか」というものだろう。ギルダの閉店時間が12時だから、そこからタクシーを拾うとなると、1時前くらいか。しかし、松男と由美子は12時より前にギルダを出て、ホテルに入ったようである。この流れから推測すると、2人は、植松圭介から紹介され焼き肉屋に行って以降、もう何度も関係を持っていると考えるのが妥当だ。
松男がギルダに来たのが21時くらいだから、そこからしばらくして店を閉め、ホテルに向かったということだろうか。その時点で、2人とも高野のことなど頭から消えていたはずだ。高野に「急な体調不良」との一言で、非常に軽いドタキャンを伝える由美子。所詮、その程度の存在なのだろう。赤坂の「あんどう」の個室で、一人ぽつんと取り残され唖然とする高野。せっかくのしゃぶしゃぶを、持ち帰り用に包み直してもらうことは可能なのだろうか。
舐められっぱなしなのを知らないのは幸か不幸か
島耕作シリーズで、夜の店の女性におぼれ身を崩すとなると、初芝の松本常務が思い出されるが、高野は大丈夫だろうか。松本のように哲学的には見えないし、銀行員ではあるが、松本ほど金は使えないだろう。松本が会社経費で馬島典子の店に通っていたのか、ポケットマネーだったのかは分からないが。
しかし、高野との約束をあっさり断っても、問題はないのだろうか。高野が報復に出たとしてもおかしくない。金融機関との関係は保っているに、こしたことはないのだ。だが、そのあたりも由美子は計算ずくなのだろう。高野が一時的に腹をたて、由美子に脅しをかけてきたとしても、あっさり封じこまれるはずだ。由美子にとって高野はワンノブゼムにすぎず、少しばかし良い顔をして、それでも気分を損ねていた場合は、一晩過ごせば楽勝くらいに考えているのだろう。そして、それであっさり許してしまうのが男の悲しい性なのだ。
退任後も気をかけるのがモテる男の秘訣
古巣のTECOTを訪れる島。目的は四谷嵐子か国分か?今日のお題は世界の半導体事業、そして、中国での事業についてである。TECOTを退任した島にはもう関係のない話のような気がするが、気にかけるのがこの男である。それとも暇なだけか?
TECOTはソラーと半導体工場の交渉を進めているようだ。そして四谷は、TECOTの中国法人を整理しようと考えている。台湾有事の発生リスクがあり、そもそも人件費は日本のほうが低くなっている。今後、中国に工場を置き、現地生産を続ける価値はほとんどないというのが実情である。いち早く整理するのが賢明な経営判断だろう。
ところ変わって、UEMATSU本社である。昼下がりに社長室でのんびり昼寝、といったかんじの植松権兵衛だが、そんなのんき話しではなかった。秘書の呼びかけに答えず、椅子から崩れ落ちる権兵衛。昼寝ではなく、意識がなかったのである。どうなる権兵衛?どうなる後継者争い?この展開こそが島耕作ワールドである。