お気に入りマンガの感想のようなブログです【一部ネタバレあり】

【STEP14】Have I The Right?

植松権兵衛が倒れたことによる臨時取締役会なのである。何事かと思って緊急招集された取締役の面々は、その場で権兵衛の手術、入院について知る。権兵衛が倒れた当日、病院に出向いたのは権兵衛の妻と、息子の圭介以外では、平瀬と島、取締役会議長の徳野恭三、そして社内の人間では長峰和馬である。社内の経営層の人間は当日中に連絡が言っていると思うが。それ以外の社外取締役には伏せていたのだろう。さすがに驚きを隠せないようである。

さて、臨時取締役会の議題は当然ながら、権兵衛が不在で、かつ重度の後遺症が残る可能性が高いなか、当面の代行者を誰にするかである。

不意にコメントを求められたときに士気を挙げられるかは結構重要

臨時取締役会で真っ先に手を意見を述べたのは、取締役執行役の上杉博志である。UEMATSUは権兵衛のオーナー企業であり、その副社長であり長男(実は長男ではない)でもある圭介が代行を務めることは自然だ。そういえば、臨時取締役会に剣持松男は出席していない、監査役ということで招集されなかったのだろうか。招集されていたらそれはそれで、どんな顔をしていたか興味深かったが。

圭介が当面の間、代行を務めることは全会一致で承認されたが、肝心の当人に自覚があるのか見て取れないのである。徳野議長から一言求められても、本当に一言で終わるのである。これには圭介代行案を推した上杉もガッカリである。もしかしたら上杉には会長夫人から、圭介を代行に推すよう依頼(というか命令)でもあったのだろうか。

ここは意気込みだとか覚悟だとか、権兵衛不在の窮地を取締役会、社員一丸となってーーーくらいは言ってほしいところだが、圭介はそんな気の利いたことを言える男ではない。そもそもそんなのを圭介に求めるほうが間違っているのだ。そんなタマでないことは、取締役会の連中なら分かっていたはずだ。まあ、分かっていてもかすかに期待を持ってしまう、との言うのも分かるが。

良いことがないのがわかっていても相手のスマホを見てしまう心理

さて、時代は顔認証である。うっかりスマホを放置して寝てしまう者なら、寝顔を引証され、スマホのロックは解除されてしまうのである。

人のスマホを勝手に覗き見るのはマナー違反である。寝顔で顔認証を解除するのも、寝ている最中に指紋をスマホにあてて認証するのも、解除パターンを覚えて指でスマホ画面をなぞって解除するのもNGである。そもそも人のスマホを覗き見ても良いことなど1つもないのである。、夫婦間、恋人間であればなおさらである。むしろ見ないほうが幸せである。これは真理である。

今さら権兵衛のスマホを覗き見て、どうしようというのか。権兵衛の女性関係を調べてなにがしたいのか。夫婦のことは夫婦にしかわからない。おそらく権兵衛の妻は、権兵衛の日ごろの振る舞いが気に入らなかったのだろう。外に女がいる気配、婚外子がいる気配をかぎ取っていたのだろう。そして勝手に倒れ、重度障害が残ることすら気に入らない。意識が戻る前にいろいろと調べ、動いておきたかった、ということではないだろうか。

弘兼作品における銀座の女性は基本的にめちゃ強い

権兵衛の妻に頭が上がらない長峰を連れ、訪れたのは銀座のクラブ「ゾラ」である。スマホを覗き見て、権兵衛の行きつけであることは把握している。そしてゾラのママの園子と権兵衛が愛人関係であることも、2人のやり取りから明らかである。そんなママの店に乗り込む道理も良く分からないが、ママの存在を確認するや否や、権兵衛の状態を伝え、ケンカを売る会長夫人。店内でいきなり大声を出されたら、周囲の客も店の女の子もドン引きである。

会長夫人のターンは続き、今度は園子と権兵衛を手切れさせようとするわけだが、園子も銀座で生き抜いてきた女性であると思われる。手切れ金を示されようが、暴力に出られようが、一度でも舐められたら終わり、ということなのだろう。1ミリも引く様子がない園子だった。

今回分かったことは、勢い怒鳴り込んできた会長夫人だが、格としては園子の方が上のようであるということ。そして、会長夫人の命令があろうがなかろうが、UEMATSUの人間がクラブ「ゾラ」に足を運びにくくなったのは間違いない、ということである。そもそも園子も、こんな会長夫人の存在を知った以上、権兵衛やUEMATSU絡みの売上は、すでに計算から消えているかもしれないが。