三銃士といえば、アレクサンドル・デュマ・ペールの小説である。3人が活躍する話かと思いきや、ダルタニャンと、彼ととともに戦う3人の仲間の姿を描いた小説である。
今回の三銃士は、島と徳野恭三、長峰和馬の3人である。そうなるとダルタニャンは植松権兵衛会長になるのだろうか。権兵衛の症状は少しずつ回復しており、会話はままならいものの、寝たきりからは脱したようである。まだ口が回らないが、介護士が聞き取りをすることでコミュニケーションをとっているらしい。しかし会長夫人の貴子が見舞いに来ている様子はないので、社内では主に長峰が定期的に病院通いをしているのだろう。
老兵は死なず、も継ぐのはどちらか
三銃士の役割は、権兵衛が役職を続けるかどうかの意思確認と、UEMATSUの後任についてである。権兵衛は自身の体のことをよくわかっているのだろう。また、倒れる前から引退を口にしていたこともあり、そのまま退くつもりのようである。
三銃士に無駄な話は不要である。退任の考えを聞くと次は後継に話を移す。後継は、現在社長代行を務める植松圭介がそのまま代表に就くと思いきや、権兵衛は、剣持松男がふさわしいと考えているようだ。圭介の出来の悪さ、器のなさは誰もが感じているところだが、権兵衛はなぜ松男が良いと思うのだろうか。最近、社外監査役として加わったばかりの人物である。
思うに、権兵衛からみて松男の方が長男であること。一緒にゴルフをしたことで松男の人柄に触れ、譲るべきは圭介ではなく松男である、と判断したのではないだろうか。
しかし、会長夫人はその判断を許すだろうか。松男のことを男性と意識し始めている貴子とはいえ、UEMATSUの後継は圭介以外にないと考えているだろう。そもそも、松男が圭介の兄にあたる人物ということすら知らないのだ。このままでは貴子が大暴れするのは必至である。
後遺症によりうまく会話ができない権兵衛の話しを見事に聞き取る介護士のハイスキル
お役目を終え三銃士はさっそうと去る、かと思いきや、長峰だけは残ることになった。どうやら権兵衛は後遺症が残る体になっても、銀座の「ゾラ」の園子のことが気になるらしい。三銃士のなかで長峰だけを残したのは、彼を通じて園子と連絡を取り、見舞いに来てもらうためである。そこまでして会いたいのかわからんが、20年も付き合いのある男女となれば、そういうものかもしれない。
それにしてもすごいのは、口が良く動かない権兵衛の話をしっかり聞き取る介護士である。目立たず、島耕作ワールドの中では地味に描かれているが、非常に高いスキルの持ち主である。
覚悟のない圭介と覚悟を決めた松男の決定的な違い
覚悟である。剣持松男の覚悟である。野心は性の好みを超えるのか。好みでなくても貴子もなかなかの年齢なわけだし、それでもやれるものなのだろうか。それとももともと好みで、なんなら野心も性欲も満たせて両得くらいに思っているのか。会長夫人も70歳くらいだろう。エステに通うなど美容には努めているだろうが、体形は相応であり、失礼ながら決して美形なほうではない。そう考えると、大町愛子の美しさよ。まあ、保有資産が桁違いなので比較対象にはならないが。
ともあれ、松男は実父の妻を寝取ったのである。権兵衛からしたら、今さら妻との関係がどうなろうと、寝取ってくれてもなんとも思わず、離婚の理由ができたと思う程度かもしれないが。
バアさんの自覚がある貴子だけに、松男がなぜ自分を相手にしてくれるのか、さすがに疑うわけである。何か企てているのは間違いないのである。しかしそこは見事な松男の返しである。生来の熟女好きとはどういうことか。ナチュラルボーン熟女好きなど聞いたことがない。いや、そういう人もいるかもしれないが。身についた性癖や好みではなく、「生まれながら」の好みなのである。そんなわけないだろ!と思うが、陥落した乙女には、満たされている今が大切なのだろう。