何だか珍しく、ちゃんと仕事をしているのである。UEMATSUが請け負っている仕事を見て回っているようである。おなじみの平瀬健一、そして剣持松男の姿もある。社外監査役に着くにあたり、そして後継社長に推してもらうまでの間、UEMATSU事業などいろいろ知りたいといっていた松男の発言は嘘ではなかったようである。銀行マン時代も多くの会社を訪問してきただろう。視察などあたり前の感覚なのかもしれない。
一方の、いつも能天気な副社長である。一方的に馬が合うと思いこんでいる松男をイタリアンへのお誘いである。そんなに松男と会うのが楽しいのか知らんが、六本木の店は植松圭介の行きつけのようである。
圭介が向かったのは六本木のイタリアン「VIA LATTEA」である。イタリア語で天の川や銀河を意味するらしいこの店で働いている女性と、圭介は付き合っているのである。つまり、どちらかというと本命はこっちで、「ギルダ」の開店資金6000万円の保証人になっている清宮由美子は、愛人関係ということなのだろう。
圭介の能天気ぶりというか無計画ぶりはなかなかのものである
付き合っている女性に店を持たせたい、という気持ち素直には良いのだが、それは個人的に応援すべきだろう。それなのに圭介は、その資金をUEMATSUで出せないか、というのである。投資目的ということでの資金ねん出を考えているようだが、元銀行マンの判断としてもNoである。塗装会社がいきなり飲食店経営をするなど、無計画すぎるだろう。さすがに無理やり感があるからこそ、社外監査役の松男に相談を持ち掛けたのだろうか。
たしかに社外監査役が「投資目的として勝ち目がある」と判断すれば、社外取締役会の空気も変わるかもしれない。もしかしたら、圭介はそこまで計算して会食の場をセッティングしたのだろうか。意外とやり手なのだろうか。しかし、そこは会社の金ではなく、自分の金でやれ、と思うのである。自分の付き合っている女性に店を持たせたいのであれば、なおさら会社の金を使うべきではないのである。
ところが、圭介には現金がないのである。だから松男に相談を持ち掛けたのである。現金以外の資産はあるようだが、現金は遊興費で使い切ってしまうらしい。恐ろしい金の使い方である。会社経費で飲み歩いているだけでは足りないということか。それともすべてポケットマネーなのだろうか。そんなだから、松男からも経営者としての自覚についてチクリといわれてしまうのである。
会長夫人の貴子と松男の逢引きの場は都内のホテルである
二人はもう何度も肌を合わせているのだろう。それにしても、松男は面倒くさくなったりしないのだろうか。野心のためか、それともやはり、生来の熟女好きだから苦になどならないのだろうか。
さて、ベッドの中で少しずつ社内の話に持っていくのが、松男のアタマの良さである。後継者問題について、圭介の話を少しばかり変えて伝えるのが松男の策略なのだろう。ただ、貴子はUEMATSUの「血」にこだわりがあるようだ。権兵衛のことが憎たらしく、一回見舞いに行ったきりのわりに、後継に他人の血が入るのは反対らしい。しかし「血」でいうと、松男こそが、権兵衛の血が入った人間である。もちろんそんなことを貴子は知る由はないが。
情なのか義理堅いのか愛なのかワザワザ夜の病室を訪れる権兵衛の愛人
さて、権兵衛が入院する夜の天慶医大医療センターを訪れたのは銀座のクラブ「ゾラ」の園子である。新しい携帯で権兵衛と園子をつないだ長峰はさすがUEMATSUに長く務める取締役なのである。
夜にワザワザ来て何をするのかと思いきや、ようは権兵衛の性欲を満たすためである。それに応える園子もなかなかのタマである。おそらく、店の前に訪れたのではないかと思うが、さすが20年の付き合いといったところだろうか。
そして、病室でいきなり女性が服を脱いだり唐突なエロシーンが始まるのは弘兼先生の十八番といっても良いだろう。脳出血の後遺症で車いす生活になっても下半身は元気のようであるのもすごいが、園子を病室に案内した後に、廊下から2人の様子を顔色一つ変えず覗き見る介護士の女性もなかなかである。