松比良塗建との癒着、UEMATSUに対しての背任行為が発覚した高藤成行営業本部長と、岡林功次営業部長は当然ながら断罪である。ただ、取締役会でも意見は割れるのである。UEMATSUに損害を与えたという点から告訴をするか、それとも損害金や松比良から受け取った金を含めて金額の返還で済ますか。
高藤の懲戒免職は避けられないとして、岡林は自主退職勧告となるようである。社内規定によるが、懲戒免職であれば退職金は出ないだろう。岡林は自主退職なので退職金は支給されるようである。松比良から受け取った100万円は、退職金から差し引き、相殺ということになると思われる。
割に合わない背任行為で処分される古参に情をかけるのが正かドライに処分するのが正か
しかし、高藤が受け取った金は400万円を一回だけなのだろうか。これでは、あまりに割に合わないリスクをとっていたことになる。数千万円や億に届くような金額の着服などであればまだ理解できるが・・・。長くUEMATSUに務めてきた男の、悲しい末路である。
その取締役会で人情に訴えたのが、意外にも植松圭介である。社内の人事処理など関心がないかと思いきや、高藤を告訴までするのは心苦しいようである。能天気ぶりを発揮し、取締役連中の評価が低い人物の珍しい主張に、剣持松男もやや驚きの表情である。
その剣持はあくまで強硬だ。社外取締役議長の徳野恭三の提案にも異議を申し立てる、強気っぷりである。人情論を訴える圭介に対し、コンプライアンスの徹底、UEMATSUが今後、さらなる発展を飛べるためにシビアな経営をすべき、と主張するのであった。
いつも良いものを食べているいつもの二人の夕食は鮨
今晩の島と平瀬健一はカウンターでの鮨である。今晩の酒の肴は、UEMATSUの取締役会での剣持の振る舞いである。剣持が取締役会に一石を投じたのである。UEMATSUは上場しているものの、植松権兵衛会長のオーナー企業である。親分の力が強すぎ、これまでは活発な意見は生まれなかった。それが、権兵衛の療養、剣持の登場によって変わったのだ。少々強引ながら正論をぶつける剣持の存在感は、島と平瀬から見てもかなりの印象だったようである。剣持としてみれば、あいさつ代わりであり、次期社長への名乗りの第一歩としてはまずまずといったところだろうか。
さて、日に日に回復している様子の権兵衛から島への架電である。スマホのフリックもできるくらいは普通にできるのだろうか。それとも介護士がやってくれているのか。その介護士は、権兵衛の専従トレーナーとして契約したようである。
権兵衛が島に伝えたのは、次期社長の件である。先日、三銃士が権兵衛を見舞った際は、取締役会に一任というかたちで、権兵衛自身の意見は具体的になかったが、今回は違う。明確に、圭介より松男が適していると島に伝えたのである。もちろん、最終的には取締役会での議題を経ることになるが、現オーナーの心境が大きく影響することは間違いないだろう。
モブキャラにみえるが実はカギを握りそうな介護福祉士の狙いは遺産なのだろうか
さて、無事に退院した権兵衛だが、家には帰らないのである。ではどこに住むのか?ホテル暮らしをするようである。上場企業のオーナー社長であれば、金には困らないだろう。もちろん、専従契約をした女性トレーナーもこれからはホテル通いである。病院とは介護士の業務委託契約だったのだろうか。それとも病院の社員か、もしくは介護士として病院に派遣されていたのだろうか。専従ということであれば、これまでの所属先との契約は打ち切り、権兵衛個人もしくはUEMATSUと業務委託契約を結んだということだろうか。
ちなみに、介護福祉士の平均年収は400万円ほどのようである。大企業のオーナー社長の権兵衛である。専従契約で年収800万円、1,0000万円程度を提示していてもおかしくないだろう。
権兵衛はそのトレーナーと一緒にホテル暮らしをしたいようだが、さすがにそれはムシが良すぎるというものだ。しかし、この介護士も結構な役者ぶりなのである。まだ何を企んでいるか分からず、腹のうちを見せていない。しかし権兵衛はもう介護士を信頼しきっており、コロッといかれてしまいそうな雰囲気なのである。
互いに干渉しない関心を持たないのはむしろ優しさに感じなくもない
そして、夫がそんな感じなら、妻の貴子もそんな感じなのである。剣持との逢引きの場所はもはや、なじみなのだろう、都内のオシャレなホテルである。そこで、剣持松男が隣でタバコをくゆらすベッドのなかから、夫からの電話を受けるのである。
退院のことを伝えても、家には帰らないことをわざわざ伝える必要があるのだろうか。いや退院となれば、普通は家に帰ってくることを想定する。介護が必要な高齢者が新たに家で暮らすとなると、いろいろ準備が必要だ。段差や手すりなど、バリアフリー対応を万全にしなければならない。そう考えると、逆にこれは正しい連絡なのか。いや、むしろ妻に負担をかけないという、優しさに近いレベルなのか。
しかし貴子も、権兵衛が帰ってこないことなどは百も承知なのである。お互い自由にやっており、もはや夫婦としてのテイなど、なしていないのである。しかしこれもある意味、互いを理解していればこそ、とも言えるのではないだろうか。夫婦の在り方はさまざまで、夫婦にしか分からないのである。