雨を見たのは誰か? 谷村鉄也・パインデベロッパー前社長は、UEMATSU本社6階のトイレで壮絶な最期を遂げたのである。早朝に命を絶ったようで、詳しい理由は不明だが、突然の解雇通告が引き金になったことは、トイレの壁に書かれた遺書からも明らかだ。ただ、解雇は事実だが、それが理不尽なものだったのか、それが自死の直接の引き金になったのかは誰にも分からない。まさに「死人に口なし」である。
いきなり、主を失った家族はどう思うのか。剣持のことや解雇について聞かされていたら、UEMATSUや剣持を告訴する可能性もあるだろう。ただ、解雇通告は剣持が谷村との会食の場で伝えただけで、他に人はいなかった。店員が承認になるのは無理があるので、パワハラの事実も立証できないはずだ。このままでは泣き寝入りである。
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コンプラ時代にワンマン・剛腕経営は通用するのか

とはいえ、剣持の強引なやり方はどこまで通用するのかという疑問がわく。生え抜きの役職者をどんどん切るのは良いが、それに代わる人材はUEMATSUグループにいるのだろうか。M&Aで売り上げを伸ばしている企業とはいえ、人材難の時代である。優秀な人間をすぐにヘッドハンティングできるとは限らない。また、剣持の強引な経営方針に耐え切れず辞める社員も増えるだろう。徹底した実力主義で野心家の社員ばかりの会社に作り替えるつもりなのか。
さて、谷村の密葬が行われ、島、剣持、平瀬、徳野、上杉、長峰の6名が自宅に足を運ぶ。なぜ副社長の圭介は参列しないのか?真意は良く分からないが、谷村との接点はあまりなかったのだろうか。
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ポーズか悔恨か、修羅の道に踏み込んだお琴はどのような結末を迎えるのか

人の亡くなり方は様々だが、最も小さくしめやかに行われるのは今回のようなケースだろう。UEMATSUに長く務め、貢献してきた人物としては非常に寂しい家族葬である。
そして、当然ながら剣持は家に上がることを許されないのである。推定100万円のぶ厚い香典を受け取るそぶりなど1ミリもないのは、残された者のせめてもの意地と抗議の姿勢の現れだろう。なぜ主はこの世を去ったのか。それを思えば、そのきっかけとなった人間の顔など見たくもないのは当然である。剣持以外の取締役の面々は、とりあえず関係ない、とみなされたのだろうか。焼香を上げることはできたようである。
さて、剣持の心境はいかに。雨降る中、島たちの焼香が終わるのを傘もささずに待ち続けていた男は何を思うか。遺族や取締役へのポーズか、それとも自身の目的達成の犠牲となった男への詫びなのか。最悪の事態が起きた以上、剣持も引き返せない道を進んでいるのだ。
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