お気に入りマンガの感想のようなブログです【一部ネタバレあり】

【STEP35】When You Wish Upon A Star

島が、体よくUEMATSUの本社業務から外され、パインデベロッパーの新社長に収まった植松圭介を訪問した意図はどこにあるのだろうか。圭介の母である貴子からの頼みだろうか。

吉祥寺も良い街だが、確かにオフィス街のような都心とは少し離れている。ただ、圭介は気に行っているようである。不動産業についても社員に教えを請いながら慣れようとしているようである。メガバンクが売りに出している保養センターを買い取り富裕層向けマンションを建築するプロジェクトもあるようで、未経験の業界ながら地に足をつけて頑張っている様子が見て取れる。これはかなりの成長なのではないだろうか。

ミサイルにはミサイルを、剛腕がぶつかると何が起きるのか

さて、話題は移り、UEMATSUの取締役会に新しく加わった各務英明についてである。多少強引な手法で社を大きくしてきた点、ワンマン経営という点で、各務と剣持松男は似ている。似ている者同士をぶつけ、剣持のストッパーとなることを期待しての社外取締役就任である。業界では圧倒的に格上の各務にガツンと言ってもらい、剣持の暴走を止めようという魂胆だが、上手くいくのだろうか。同じ匂いがするということで、今日な親近感を持ち剣持の方を持つようなポジションにならないか、ちょっと心配でもあるのだ。

そして、似ているといえば、剣持も植松権兵衛もワンマンぶりはそっくりである。似ているのは当然、親子だからだろう。しかし、「そりゃあ親子だから似ていますよ」など口に出す島ではない。まさか権兵衛と剣持に血のつながりがあり、剣持が自身の兄にあたると知らない圭介にそんな考えが及ぶはずがなく、お気楽に花火大会の観覧を招待するのだ。やっぱり圭介はいい奴なのである。

何故ワンマン経営は成り立たないのか Kindle版

打ち上げ花火、妻と見るか元愛人と見るかそれともその場から逃げ出すか

隅田川花火大会は、意外にもその名称が使われたのは昭和53年と、新しいのである。ただ、隅田川での花火の由来は古く、江戸時代に花火師が喧伝目的で打ち上げたことにはじまる。

100万人の人出が見込まれる都内指折りの花火大会を普通に見るのは、半端な覚悟ではできないだろう。貴族はゆっくり特等席でディナーショーとして楽しむのだ。圭介に招待された店で、フレンチを楽しみながらの観覧である。同席者は貴子、そして圭介の結婚相手の美夢有である。圭介が結婚したことも、そして父になることも初めて知る島。そして、貴子も圭介と美夢有を応援する考えに変わったようで、幸せな時間が流れるのだ。なんと素晴らしいことなのだろう。

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? [DVD]

しかし、この作品において、そんな幸せな時間が長く続くわけがない。刹那、なぜか、同じ店に姿を見せる剣持松男と清宮由美子。この世間の狭さが島耕作ワールドなのである。

花火大会など、始まれば皆、夜空を見上げるばかりで隣の人間など目に入らないのである。しかし、ふと横を見る機会なども当然あるわけで、そこで見事なタイミングでばったり出会ってしまうのが、島耕作ワールドなのだ。まさかこの場面で、様々な感情が入り乱れる面々が顔をあわせることになるとは、だれが予想しただろうか。花火などすっかり忘れて皆、驚きなのである。驚いていないのは美夢夕くらいだろう。美夢有から見れば、島をはじめ、剣持も由美子も面識がないはずなので、どちら様?といったところだろうか。

ばったり過ぎる地獄のような場面で平静を装うのは無理筋

さて、こんなところでばったりである。ここでそれぞれの関係を簡単に整理してみたい

島耕作(この物語の主人公)
植松圭介(UEMATSUグループ副社長、パインデベロッパー社長)
植松貴子(圭介の母、植松権兵衛の妻)
剣持松男(UEMATSUグループ社長、植松権兵衛の子で圭介の兄。ただし腹違いのため圭介はそのことを知らない)
清宮由美子(「Barギルダ」の経営者。圭介の愛人だが最近は剣持と付き合っている。ただし圭介はそのことを知らない様子)
下山美夢有(圭介の妻。イタリアンレストランのシェフ)
島耕作から見た剣持松男:自身が社外取締役を務める会社の新社長
⇒植松圭介:自身が社外取締役を務める会社の新社長

プロフェッショナル 仕事の流儀 一瞬の美にすべてを懸ける 花火師 野村陽一の仕事 [DVD]

島は、剣持が由美子と付き合っていることは知らないだろう。剣持と貴子がなんだか親しげにしていたのは知ってはいても、その後の愛人関係だったとか別れたとかまでの情報は入っていない可能性が高い。そして、七瀬五郎と探りのために訪れたギルダのママは圭介と関係していたはずなのに、なぜ剣持も一緒にここに来ているのか、といったところだろうか。

剣持は、由美子とそういう仲のことを島にも圭介にも言っていない。圭介が結婚したことも知らず、美夢有とは、彼女が勤めるレストランで圭介と食事をしたことはあるが、初対面だろう。貴子とは多分、公園内のボートで別れ話をして以来の再会である。

圭介は、剣持がなぜ由美子と一緒にここにいるのか、いつの間にそういう仲だったのかという感じだろう。ていうか、剣持とは仕事以外は会いたくないはずである。そして由美子には結婚したことは話していないと思われる。ていうか、由美子には美夢有の存在を知らせていないだろう。

由美子は、自分が圭介から剣持に乗り替えたことを圭介に言っていないはずである。圭介はそれを知らず、今もギルダに通っているかもしれない。もちろん由美子は、圭介が結婚したことも知らない。ていうか美夢有の存在も知らないかもしれない。圭介の母である貴子とも初対面かもしれない。

貴子は、にっくき剣持と別れて以来の再会だろう。その男が女を連れて花火大会を観覧である。そして、由美子のことは知らないが、圭介の素振り次第では、何か関係のあった女だと気が付くのではないだろうか。

美夢有は、剣持と由美子は初対面だろう。由美子と圭介の関係は知らないはずである。剣持が圭介の兄にあたる人間であることも知らない。何も知らないのであれば、美夢有が一番幸せかもしれない。しかし、面々の素振りから過去の関係が見え隠れし、それを察するのではないだろうか。

こういうとき、どのようにふるまうのが大人なのだろうか。耕作の口癖は「It’s not my business」(私には関係ないこと)だったが、ここでもさわやかにふるまうのだろうか。