もう花火なんかどうでも良いのである。腕の良いシェフによるフレンチを堪能したのなど、もうすっかり過去のことなのである。大人の対応で済ませるのか、バチバチやり合うのか、切り出したのは貴子なのである。
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自分を切り捨てた男が別の女を連れていたらそれは気に食わないのは当たり前

剣持松男が連れている女とは清宮由美子なわけだが、植松圭介も植松貴子と山下美夢夕の手前、自分がBar「ギルダ」のママである由美子と付き合っていたことや、銀座に店を出す際に受けた6000万円の融資の保証人になっていることなど口に出せないのである。ということで「良く通っている店のママ」程度の紹介に終始するしかないのである。
由美子は、自分が剣持と現れたことを圭介に見られて気まずくないのかと思いきや、圭介が自分の知らないところで美夢夕と付き合っていたことなど気に入らないわけである。
これは結局、誰が悪いのか?美夢夕の存在がありながら由美子とも関係を持っていた圭介が悪いのか?圭介がいながら剣持とも関係を持っている由美子が悪いのか?貴子を堕とし、由美子を圭介から乗り換えさせた剣持が悪いのか?
とりあえず、微妙にそれぞれの関係を知ってしまっている島は、場を収めようとするしかないのである。
スーパーパワーワード「変則的親子丼」
さて、一番のとばっちりは島ではなく今日の場を提供した店のシェフなように思うが、これはビジネスであるから仕方ないところか。そして、面倒ごとから解放されたかったであろう島は、貴子に呼び止めされ居残りなのである。貴子が島に聞きたいのは圭介と由美子の関係だが、貴子も大人である。あとは結婚を決めた圭介の対応次第ということになるだろう。ただ、圭介の仕事ぶりから見える成長を考えると、もう子供じみた対応はせずに、由美子との関係も清算するのではないだろうか。
つまり、剣持は圭介から、由美子を寝取り、植松権兵衛からは寝とってはいないかもしれないが、貴子と関係を持ったのである。貴子の解釈ではこれは「変則的親子丼」なのである。女性から親子丼という言葉を聞くこと自体が珍しい気がするが、変則的と前に3文字つくだけでここまでインパクトが強まるとは、これはもう日本語の奇跡である。
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リタイアを決めたオーナー社長の余生とはどんなものなのか
ところで、やはり権兵衛はリタイアとなるようである。そして、夫婦関係も終わりのようである。しかし、別れるときの豪快さというか、太っ腹というか、権兵衛も思い切りが良いものである。リタイアするとはいえ、上場企業UEMATSUのオーナーであるわけで、株式さえあれば資産としては十分だろう。ただそれでもそれ以外の資産をすべて貴子に渡すというのはなかなかの思い切りである。
しかし、権兵衛が保有するUEMATSU株の割合はどれくらいなのだろうか。上場企業だから銀行系やファンド系もある程度保有している気がするが、剣持は権兵衛や他の大株主の意向を無視して、会社を自由に動かせるのだろうか。
さて、リタイアしてどうするのかはもう分かり切っているので、貴子としても別にどうでも良いのだろう。というか、なんだかお互いすっきりした様子なのだ。というか、現預金やマンションなどを譲り受けたであろう貴子は貴子で、次は長峰とよろしくやっているのである。
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貴子のまさかのカミングアウトに島もびっくりしてアルコールも噴出

40年ほど前、権兵衛の女遊びに悩んでいた貴子の近くにいたのが、現場作業員の長峰だったのだ。そして、権兵衛が家を空けているときに貴子と長峰の関係は深まったのである。貴子25歳、長峰24歳の時という。さて、圭介はいま何歳だったろうか。そうみてみると、長峰と圭介の顔は似ているといえなくもない。というか年老いているとはいえ、権兵衛と圭介は顔も性格も似ている点が少ない。いい奴でいえば圭介も長峰もいい奴である。
長峰も独身のようで、貴子も権兵衛と別れて独身になるとなれば、これはもう誰に何を言われても関係ないのである。しかも貴子は今後UEMATSUとはほぼ無関係な人間ともいえる。
まあ、必要なような、いらないような情報をインプットされた島も社外取締役として「It’s not my business」(私には関係ないこと)とはいえず、なんとも言えない表情になるのである。ただ、いえるのは花火を楽しんだことなどもうすっかり忘れてしまっているだろうということである。