お気に入りマンガの感想のようなブログです【一部ネタバレあり】

社外取締役【STEP47】NEVER YOUNG

数10年ぶりのニューヨーク編から流れは一変、令和6年度 UEMATSU塗装株式会社第1回取締役会開催である。昨年の各務英明が取締役に続き、取締役執行役が加わった。そして新メンバーは、助宗(すけむね)太郎。UEMATSUが昨年買収した、IT基板の製造をしているレインボーインキの代表取締役社長で、なんと剣持松男とは元同僚だという。

自分の意に沿う人間で脇を固めようという剣持の策略はうまくいくのか

しかし、買収がほぼ決まりかけていたのは、レインボーインキではなく、業界3位のレインボー工業だったと思うが、レインボーインキは別会社なのだろうか。それともレインボー工業のグループ会社だけをM&Aしたということなのか。

取締役会の仕切りは議長の徳野恭三の役目のはずだが、剣持は助宗の紹介の流れでそのまま自身が仕切り始める。切れ者の剣持のことだ。取締役会は議長が仕切ることなど理解しきっているわけだが、あえて存在を無視して進めようとしているのだろう。持ち出した件は社名の変更である。ホールディングス化に伴い、「株式会社UEMATSUホールディングス」への社名変更提案である。UEMATSUの名を残したのは驚きだが、これは剣持の策かもしれない。いきなりUEMATSUの名を消すのではなく、どこか別のタイミングで、一気に新ブランドの名を関したような社名に変更するなどの案を温めていても、おかしくないだろう。

社名変更 挨拶状 はがき 印刷 (40枚)◆私製はがき・官製はがき・私製抗菌はがき選択可能◆

自分の役割を心得て与えられた職務に当たっている人間は強い

UEMATSU塗装株式会社が株式会社Uホールディングスに変わる程度なら、特に大した影響もないように思えるが、そこで自分に求められている役割を理解しているのが策士・各務である。異論反論を述べよ、と徳野議長の存在を無視するように場を進めるワンマン社長に対抗できるのは、ある意味で空気を読まずに突っ込める人物だろう。


社名変更といえば、業績への影響は別にしても、会社の一大事である。そういえばかつてTECOTも新社名を変更し、さらに多額の予算を投じてその名をアピールしようとした。UEMATSUはTECOTほどの規模ではないが、少なくとも上場企業である。取締役会に参加している人間がほとんど初めて聞くような案件を、トップダウンで決めてしまおうとするのは無理があるだろう。

しかし、剣持はいつものように押し切れると思っていたはずだ。ところがそこに各務が登場したのだ。これは剣持の誤算である。

剛の者・各務のターンは続く

剣持のワンマンぶり、高圧的な態度を問題視するついでに、長峰和馬の件にも触れるのである。もはや議長・徳野の出番はどこにもないのである。

各務が問いただしたのは、長峰がなぜ解任されたのかという点だが、剣持の意見は、あくまで長峰本人が辞表を提出したためと言う。まあ、自ら辞めたのは事実だろうが、読者は皆、植松権兵衛子飼いである長峰を剣持が追い出したことは知っている。

各務のオラオラオラァラッシュ!

話は防衛省のステルス塗装の件にも及ぶ。そう、長峰のプレゼンが一ミリも通じず、剣持に赤子の手をひねるように一蹴されたあの件である。まあ、あの長峰のオロオロした話しぶりであれば、ほとんどの人間が少なくて、もその場での承認はしなかったように思うが。ステルス塗装の件がバラされたのは、長峰の根回し不足もあったが、自身の知らないところで動き回っていた長峰のことが気に食わず、本人もろとも潰したというのが本当のところだ。

利益の薄さから財閥系企業が手を引き始めた件とはいえ、防衛省絡みの仕事はそれなりに魅力がある。しかも基本は森塗研の技術頼みであり、UEMATSUは仲介業者のように立ち回れば良いだけであった。技術も人も大して提供しないのであれば、多少の中抜きで防衛省とのつながりを作るという判断があっても良かったはずである。もちろん、国への貢献、CSR的観点でもメリットは少なくない。このような案件を社長の独断でつぶしたのは、やはり早計であったのだ。剣持も負けず劣らずの策士のはずだが、各務の前では分が悪いのである。

さて、勝利を祝う宴ではないだろうが、なべ料理に舌鼓をうつ、島、平瀬健一、徳野、各務である。力もキャリアもある面々だが、現状は剣持をあえて泳がせているようにみえる。剣持の剛腕が勝つか、ワンマンぶりがパワハラ気質に拍車をかけ自滅するか、どちらに転ぶか見ものである。しかし、剣持にドライな評価を下しているこの4人に加え、森塗研を買収した植松貴子・長峰連合も相手にするのは、さすがの剛腕・剣持も押し切るのは難しいのではないだろうか。

各務との戦いで一敗地に塗れた剣持は助宗とバーで一杯

ということで、各務に見事にやられた剣持は、助宗とバー「hide away」で一杯である。見事な店名に脱帽である。

しかし、助宗を招き入れたのは、剣持のファインプレーかもしれないのである。レインボーインキの代表だけあって、長峰が森塗研を買収し、ステルス塗装の試作品に取り組んでいることも知っているのだ。つまり、業界内では噂になっているということなのだろう。森塗研が防衛省の仕事を請け負っていることが、すでに知れ渡っているのは大丈夫なのか、若干気になるところではあるが、しかし剣持はその情報をつかんでいないのである。これはもしかしたら、すでに剣持が裸の王様化していることなのかもしれない。

ということで、剣持の巻き返し策は、スパイ大作戦である。スパイを送り込み、森塗研の内部情報を引き出すつもりだろうが、こんな小物のような策を講じようとする人物は、この島耕作ワールドでロクな目に合わないことは、読者ならだれでも知っているのである。最悪、異国の地で命を落とすことになるわけだが、剣持がそうならないことを祈る、今日この頃である。