出張・島耕作、なぜか突然の熊本出張なのである。同行者はテコット社長の四谷嵐子。そしてテコット九州の代表取締役・喜多岡宏と渕上である。島にぞっこんだがその思いが1ミリも成就しないこの女性の登場はなぜか多い。作者のお気に入りなのだろうか。
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今日本で最も熱い地域は半導体でわく火の国・熊本か

そう、熊本は今アツいのである。熊本県内の、人口4万人ほどの菊陽町に、世界的な半導体メーカー「TSMC」の工場が作られたのだ。いきなりバブル期が訪れたといって良いだろう。作中では「WSMC」だが、その関連の視察なのである。
人口の何割かに当たる人間の雇用が生まれ、住居が増える。飲食店や商業施設も同様に増える。それは、土地の高騰、賃貸物件の家賃の高騰などにもつながる。あるデータによると、マンションの家賃は2倍程度に跳ね上がり、ランチ代は都心と変わらないような1,000円以上が当たり前の状態だという。
しかし、テコットを退任した島はなぜ熊本に出向いたのか?ステルス塗装の件と関係があるのだろうか。そもそもステルス塗装の件もUEMASTUが手を引いたのであれば、今はもうほぼ無関係に近い。森塗研とテコットを引き合わせた人物ということで今もかかわりがあるということか。そして熊本出張の旅費宿泊費はテコット持ちなのだろうか。気になるところではある。
突如沸いた好景気の光と影はどちらが濃くなるのか

熊本と言えば馬刺しである。というわけで、「馬並屋」にて馬刺しを堪能しつつ、喜多岡と渕上から情報収集をする島と四谷。どうやら菊陽町には台湾から1,000人以上の人間が赴任してきており、その経済効果は莫大なようだ。普通の農家だった人がいきなり億万長者になったり、熊本市内の繁華街が急に賑わいだしたりと、プラス面はやはり多いようである。
しかし、こういう状態は一方のマイナス面も生み出す。いきなり家賃が高騰すると、今までいた住民の生活に影響が出るのは想像にかたくない。また、人口が増えたことにより、今まで起きなかったような場所で交通渋滞が発生したり、工場が地下水を大量に使用することによる水不足の懸念だったり、である。これらはいずれ解消されていくものもあれば、慢性的な問題として定着していくものもあるのだろう。予期せぬ発展は功罪ともにあるということである。
高齢者に過酷な長距離移動にも文句ひとつ言わない島耕作

さて、「TSMC」は第2工場の建設も予定している。突如、半導体事業において注目を集めることになった国や地域は、どう対応するべきなのだろうか。そして、地政学リスクが低いとされる日本は、どういった覚悟を持って経済的発展に結びつけようとしているのだろうか。答えは5年後か、それとも10年後だろうか。
結局、馬刺しを堪能したくらいで、本日はどこにも見学に行かなかったようである一行は、嬉野温泉郷に向かうのである。熊本から嬉野温泉まで自動車移動だと、ざっと2時間はかかる。見た目より若いとはいえ、島も高齢者である。2時間の自動車移動は堪えるだろう。温泉で疲れを癒せばよい、ということなのだろうか。自動車移動は島らのリクエストなのだろうか。それとも喜多岡らの判断ミスなのか。こういった場合は寝てしまうのがむしろ正解で、ホテル到着と同時に爆睡から寝覚めた四谷嵐子は、おそらく移動疲れと無縁だろう。寝起きで元気いっぱいの四谷から予想される嬉野ナイトの誘いを、島はどのようにかわすのだろうか。
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