なんというタイミングなのか!植松権兵衛と剣持松男がばったり出くわしたのである。すべては偶然なのだが、島が仕組んだ小芝居、と権兵衛が疑うのは無理もない。
驚くべきは松男である。40年ぶりの父子対面であるにもかかわらず、感激も憎しみも何も表情に出すことない。一方の権兵衛は店に中に消えていく。いや、早く一杯やりたかっただけかもしれないが。
下手でも懸命にプレーする姿は見る者の心を打つのである

日を改めて、島は権兵衛をゴルフに誘う。体力の衰えからゴルフの引退を決めていた権兵衛も、コースを回るメンバーに松男がいるとなれば話は別である。こういう時にメンツを加えやすい要員として、平瀬健一は抜群の存在である。
寄る年波に勝てない権兵衛のプレーは相変わらず冴えない。一方、エネルギーは十分あるものの、お世辞にもうまいとは言えない松男のプレーぶり。しかし、その下手さを隠さず、小さくまとめようとしないでプレーする松男に、権兵衛は好感を持ったようである。
初対面の相手を飲みに誘えるのは陽キャだけ

さて、UEMATSUの取締役会である。社外取締役議長である徳野恭三(五井不動産会長)から、剣持松男が新社外取締役として加わることが発表される。
取締役会後、すぐさま松男に挨拶に行ったのは、弟にあたる植松圭介だった。このフランクさ、フットワークの軽さはもしかしたら圭介の特技なのかもしれない。こういったコミュニケーションスキルの高さが営業に役に立っているのだろう。
権兵衛との約束で、松男は圭介に自身が長男であることを、伝えないことになっている。そのことを知っているのは、権兵衛はもちろん、長峰和馬ら社内の取締役連中、それと島、平瀬。徳野あたりか。
圭介はお近づきの印として、松男を酒に誘う。行くのはもちろん清宮由美子の店だ。松男が四菱銀行築地支店の支店長時代に融資の審査を通した、あの店である。
自分が出資した店であることを松男に明かす圭介。単なる自慢か、能天気なのか、いい奴がちょっと間違ったところなのか。どうも軽さが目立つが、これが圭介なのだろう。